小説
ついにS&Mシリーズ最終作。 結構なボリュームがあったが、中弛みすることなく一気に読み進めることができた。 第1作目(といいつつ、実際の執筆された順序は4番目くらいらしい)「すべてがFになる」に登場した超天才・真賀田四季が再び萌絵と犀川に接近する。…
森博嗣によるS&Mシリーズのうちの一作。 今回は、犀川はほぼ活躍しない(といいつつ、幕間や終盤にちゃっかりいい味を出しているが)、西之園家の持つ別荘地の隣の別荘で起きた殺人事件。 その別荘に遊びに来ていた紳士と、西之園のお嬢様が中心となって事件の…
アル中で躁鬱の症状を抱える妻・笑子と、ゲイの夫・睦月の話。 笑子と睦月はお見合いで出会い、すぐに互いに「スネに傷がある」ことに気づき、利害関係が一致した2人は結婚することになる。 2人は夜を共に過ごしたことはなく、お互いに恋人を作っても良いと…
図書館で、たまたま見つけたタイトル <田舎の紳士服店のモデルの妻> ダサさと自尊心が絶妙なバランスで込められたその単語の組み合わせが妙に気になって手に取ってみた。 都会育ちで美人、やり手営業マンと結婚して専業主婦となった梨々子が、夫の地元に移り…
一度聞けば忘れないそのタイトル 封印再度 who inside 漢字と英字、読み方が同じばかりか、物語の主要な謎をそれぞれ表しておりまさに秀逸。 決して取り出せない鍵が入った壺、天地の瓢と、その鍵がないと開けることができない無我の匣。鍵はどのように取り…
森博嗣による、 大学助教授犀川と大学生萌絵が謎解きに挑むS&Mシリーズの第4作。 ※以下、軽くネタバレを含む。 大学を舞台にした密室での連続殺人に、萌絵のスーパー好奇心で首を突っ込み、萌絵からの情報で犀川が半ば安楽椅子探偵のように謎を解いていく。 …
20代女性同士が同居を始めたり、 独立した娘2人が転がり込んだり、 たまたま神社で知り合った人を自宅へ呼んだり、 いろんな組み合わせとシチュエーションの三人暮らしが描かれる短編集。 期待しすぎず干渉しすぎず、無理のない範囲で互いに支え合うような、…
物語は、連続猟奇殺人犯が逮捕される場面から始まる。 逮捕の現場に居合わせた人物たち-殺人犯蒲生稔、稔の家族である雅子、稔を追っていた警察OB樋口-のそれぞれの視点から、過去に遡って稔が罪を犯しはじめてから現在に至るまでが描かれる。 犯人と、その…
あれだけ蒸し暑くてイライラしてたのに、その気配が過ぎ去ろうとするとなんだか名残惜しくなる、夏。 なんだかその夏らしさを留めておきたくてたまたま目に留まった「まぼろしハワイ」。 タイトルどおり、本当に、あのハワイ独特のゆったりした感じや、風や…
米澤穂信さんの短編集は「儚い羊たちの祝宴」に続いて2作目。 恥ずかしながら、たまたま古本屋で見かけるまで知らなかったのだけどなんかしらの文学賞3冠を取ったそうだ。 めちゃくちゃワクワクしながら手に取ってみたのだけど、冒頭の期待値が高すぎたから…
昨年に続き、自分の中で夏季休暇の恒例となりつつある京極夏彦「百鬼夜行」シリーズ第2弾。 この厚み。 一般的な単行本3〜4冊分はあるであろうこのボリューム感だけど、冒頭1ページから最後のページまでほんとにずっと面白い。 信者から「汚れた金銭を浄化す…
東京の裕福な家庭で女中として働いていた「タキ」が、晩年に当時の暮らしの記憶を辿るお話。タキにとって、最も深く忠義を尽くした「平井家」での日々が綴られる。 ものすごく不可解な事件が起きたり、泥沼の愛憎劇があるわけではない。 あくまで、タキの女…
大好きな吉田篤弘さん作『つむじ風食堂の夜』の舞台、月舟町の隣の町でのお話。 主人公は町に引っ越してきた青年、大里くん。 映画を見るのが好きすぎて、うっかり仕事も辞めてしまい、大好きな映画館「月舟シネマ」のある月舟町の隣町へ住みついた。 人のい…
本屋の平積みコーナーで、「珍しく岩波文庫が…?」と装丁に目が止まると、そこには「岩波文庫的」という表記。 なんだこれはとおもいつつ、まんまと気になって購入してしまった。 率直な読後感としては、純愛物語という触れ込みだった気がするがちょっとした…
黒い背景に小さくぽっかりと浮かぶ月、左下にはガソリンスタンドの看板。 文庫本の表紙にはたったそれだけしか描かれてないけど、むしろそのそっけなさから深夜の独特の静けさや寂しさが伝わってくるようで、妙にその時の気分にしっくりときた。 そんなわけ…
同級生からいじめを受ける「僕」が主人公。 ある日、同じクラスのコジマから手紙を受け取ったことがきっかけでコジマとの交流が始まる。 そしてコジマも同じく、同級生たちからいじめを受けているのだった。 コジマは、「僕」がコンプレックスに感じていた斜…
舞台は、ラトビア共和国をモデルにした架空の国、ルップマイゼ共和国。 ルップマイゼ共和国の人々は、クリスマスツリーに使うための木を切り倒すときには必ず木の神様にお祈りをする。 家族皆が大好きな黒パンのレシピは、杵とともに母から子へ受け継がれ、…
主人公は、ショッピングセンターの片隅で、ルイーズ吉田として占いを営む元OLの吉田幸子。 吉田幸子の言うことには信憑性がない、ということでルイーズ吉田という名前を師匠のジュリエ青柳から授かったそうだが、どっちかというと吉田幸子に占ってもらいたい…
40代にして仕事を辞め、今後の人生は誰にも振り回されずに生きるんだ!と、働かずに生きると決めたキョウコ。 貯金生活を始めて約3年が過ぎたキョウコの毎日は、きわめて穏やかで平凡だ。 だけどそんなキョウコの暮らしに、2つの新たな風が吹いた。 一つは…
おお?? これは?? なんだなんだ?? っていうのが1ページ目から最後まで続く作品。 帯に伊坂幸太郎のコメントで、「この小説は必ず世に出すべきだと思った」みたいなことが書いてあったので手に取ってみたらびっくり。 絶滅した動物たちのレプリカを作る…
ホラーサスペンスという触れ込みだが、ホラーテイストはほぼ冒頭の部分のみ。 ストーリーの構成としてはサスペンスやミステリチックだけど、扱うテーマが重く(妊娠中絶)、主要人物の心理描写、心理分析が濃密なので、ストーリー構成の面白さというよりメッセ…
主人公は、からだがとても大きな「ぼく」。ねこのなきまねがほんものそっくりだから、「ねこ」と呼ばれている。 彼は、おじいちゃんがティンパニストとして街の楽団を引っ張っていて幼い頃から音楽に馴染んできたことから、いつしか音楽の道を志すように。 …
面妖な表紙デザインと凶器にもなり得るその風貌(厚さ)から、一度見たらまず忘れない『姑獲鳥の夏』。 長年、長期休みになったらやりたいことランキング上位に食い込んでいた本作品読破だが、遂に成し遂げることができた。 物語は、物書きの関口がとある病院…
伊坂幸太郎作品には珍しく、泥棒も殺人者もテロリストも出てこない話。 6章の短編から成る群像劇で、各章がタテとヨコ(各章の登場人物同士と、時系列)で絡み合っている。伊坂幸太郎作品によくある構成だけど、この作品は特に時系列が結構行ったり来たりな…
ある大学病院の医師たちが捕虜となった米兵に人体実験を行う話。 実験に加わった3名の、実験に加わるまでのそれぞれの心理が描かれる。 人命を救う使命を負う医師という立場で、物資も人も足りない中、為す術なく患者たちが死にゆく現状を嘆き、それでも大き…
あらすじ 昭和36年。放課後の用務員室で子供たちに勉強を教えていた大島吾郎は、ある少女の母・千明に見込まれ、学習塾を開くことに。この決断が、何代にもわたる大島家の波瀾万丈の人生の幕開けとなる。二人は結婚し、娘も誕生。戦後のベビーブームや高度経…
あらすじ 邪の家系を断ちきり、少女を守るために。少年は父の殺害を決意する。大人になった彼は、顔を変え、他人の身分を手に入れて、再び動き出す。すべては彼女の幸せだけを願って。同じ頃街ではテロ組織による連続殺人事件が発生していた。そして彼の前に…
あらすじ コンビニ強盗に失敗し逃走していた伊藤は、気付くと見知らぬ島にいた。江戸以来外界から遮断されている“荻島"には、妙な人間ばかりが住んでいた。嘘しか言わない画家、「島の法律として」殺人を許された男、人語を操り「未来が見える」カカシ。次の…
あらすじ 太古の森をいだく島へ―学生時代の同窓生だった男女四人は、俗世と隔絶された目的地を目指す。過去を取り戻す旅は、ある夜を境に消息を絶った共通の知人、梶原憂理を浮かび上がらせる。あまりにも美しかった女の影は、十数年を経た今でも各人の胸に…
あらすじ 懐かしい町「月舟町」の十字路の角にある、ちょっと風変わりなつむじ風食堂。無口な店主、月舟アパートメントに住んでいる「雨降り先生」、古本屋の「デニーロの親方」、イルクーツクに行きたい果物屋主人、不思議な帽子屋・桜田さん、背の高い舞台…