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ゆる読。

気が向いたときに小説やらの感想を残すブログ。ほっこり系、ミステリが主。

大天才・四季の魅力がふんだんに詰まった一作|小説『有限と微小のパン』

ついにS&Mシリーズ最終作。 結構なボリュームがあったが、中弛みすることなく一気に読み進めることができた。 第1作目(といいつつ、実際の執筆された順序は4番目くらいらしい)「すべてがFになる」に登場した超天才・真賀田四季が再び萌絵と犀川に接近する。…

S&Mシリーズを何作か読んでいる人にだけおすすめする|小説「今はもうない」

森博嗣によるS&Mシリーズのうちの一作。 今回は、犀川はほぼ活躍しない(といいつつ、幕間や終盤にちゃっかりいい味を出しているが)、西之園家の持つ別荘地の隣の別荘で起きた殺人事件。 その別荘に遊びに来ていた紳士と、西之園のお嬢様が中心となって事件の…

優しさが大切な人を傷つける|小説『きらきらひかる』

アル中で躁鬱の症状を抱える妻・笑子と、ゲイの夫・睦月の話。 笑子と睦月はお見合いで出会い、すぐに互いに「スネに傷がある」ことに気づき、利害関係が一致した2人は結婚することになる。 2人は夜を共に過ごしたことはなく、お互いに恋人を作っても良いと…

普通と特別の間でもがくすべての大人たちに|小説『田舎の紳士服店のモデルの妻』

図書館で、たまたま見つけたタイトル <田舎の紳士服店のモデルの妻> ダサさと自尊心が絶妙なバランスで込められたその単語の組み合わせが妙に気になって手に取ってみた。 都会育ちで美人、やり手営業マンと結婚して専業主婦となった梨々子が、夫の地元に移り…

アンディとの宝物のような時間を見事にウッディの次の人生へ昇華させた|映画『トイストーリー4』

公開直後、ヤフーレビューが大荒れした、ということだけ小耳に挟んでいたことにより、もし自分もがっかりする内容がどうしよう。。。とずっと二の足を踏んでいた本作。 結論、 傑作でした。 いやもう、声を大にして言いたい。 トイストーリーは、4を持って結…

ベストオブ人生で一度は思いつきたいタイトル|小説『封印再度 who inside』

一度聞けば忘れないそのタイトル 封印再度 who inside 漢字と英字、読み方が同じばかりか、物語の主要な謎をそれぞれ表しておりまさに秀逸。 決して取り出せない鍵が入った壺、天地の瓢と、その鍵がないと開けることができない無我の匣。鍵はどのように取り…

犀川&萌絵の大学生活と成長を楽しむ|小説『私的詩的ジャック』

森博嗣による、 大学助教授犀川と大学生萌絵が謎解きに挑むS&Mシリーズの第4作。 ※以下、軽くネタバレを含む。 大学を舞台にした密室での連続殺人に、萌絵のスーパー好奇心で首を突っ込み、萌絵からの情報で犀川が半ば安楽椅子探偵のように謎を解いていく。 …

十組十色の暮らし模様|小説「三人暮らし」

20代女性同士が同居を始めたり、 独立した娘2人が転がり込んだり、 たまたま神社で知り合った人を自宅へ呼んだり、 いろんな組み合わせとシチュエーションの三人暮らしが描かれる短編集。 期待しすぎず干渉しすぎず、無理のない範囲で互いに支え合うような、…

ままならない愛の形|小説「殺戮にいたる病」

物語は、連続猟奇殺人犯が逮捕される場面から始まる。 逮捕の現場に居合わせた人物たち-殺人犯蒲生稔、稔の家族である雅子、稔を追っていた警察OB樋口-のそれぞれの視点から、過去に遡って稔が罪を犯しはじめてから現在に至るまでが描かれる。 犯人と、その…

そこにはハワイがつまってる|小説「まぼろしハワイ」

あれだけ蒸し暑くてイライラしてたのに、その気配が過ぎ去ろうとするとなんだか名残惜しくなる、夏。 なんだかその夏らしさを留めておきたくてたまたま目に留まった「まぼろしハワイ」。 タイトルどおり、本当に、あのハワイ独特のゆったりした感じや、風や…

安定感あるミステリ短編集|小説「満願」

米澤穂信さんの短編集は「儚い羊たちの祝宴」に続いて2作目。 恥ずかしながら、たまたま古本屋で見かけるまで知らなかったのだけどなんかしらの文学賞3冠を取ったそうだ。 めちゃくちゃワクワクしながら手に取ってみたのだけど、冒頭の期待値が高すぎたから…

雪のように寂しさが降り積もる|小説「密やかな結晶」

だんだんと何かの記憶-例えばカレンダーやオルゴール-が消滅して行ってしまう人たちの物語。 しんしんと雪が降り積もるように、少しずつ何かを失っていく人たちの寂しさが積もっていく。 だけど、記憶をなくしていく人たちは誰も泣き喚いたり、怒ったりしな…

太宰治の心の断片に触れる|エッセイ「もの思う葦」

太宰治が執筆活動を始めて間もなくから、彼が亡くなる前年までの間に各所に投稿された随筆をまとめたエッセイ集。 正直、読み始める前の太宰治イメージといえば 人間失格(大分前にうっすら読んだ やたら心中を試みている やたらいろんな女性にちょっかい出し…

魍魎とは境界なのだよ|小説『魍魎の匣』

昨年に続き、自分の中で夏季休暇の恒例となりつつある京極夏彦「百鬼夜行」シリーズ第2弾。 この厚み。 一般的な単行本3〜4冊分はあるであろうこのボリューム感だけど、冒頭1ページから最後のページまでほんとにずっと面白い。 信者から「汚れた金銭を浄化す…

大きすぎる危機は、足元まで来ないと気付かない|小説『小さいおうち』

東京の裕福な家庭で女中として働いていた「タキ」が、晩年に当時の暮らしの記憶を辿るお話。タキにとって、最も深く忠義を尽くした「平井家」での日々が綴られる。 ものすごく不可解な事件が起きたり、泥沼の愛憎劇があるわけではない。 あくまで、タキの女…

実はサンドイッチがめちゃ美味しそう|小説『それからはスープのことばかり考えて暮らした』

大好きな吉田篤弘さん作『つむじ風食堂の夜』の舞台、月舟町の隣の町でのお話。 主人公は町に引っ越してきた青年、大里くん。 映画を見るのが好きすぎて、うっかり仕事も辞めてしまい、大好きな映画館「月舟シネマ」のある月舟町の隣町へ住みついた。 人のい…

人生楽しんだもん勝ち|漫画『腐女子のつづ井さん』

オタク活動に日々勤しむ20代女性:つづ井さんの日々をつづった漫画エッセイ。 このつづ井さんの、「推し」という存在を通じて生きる活力を自らの手でクリエイトしまくる姿にハマってしまい、『腐女子のつづ井さん』2巻、3巻も即買いし、さらには続編の「裸一…

生まれ変わっても追いかけ続ける様は軽くホラー|小説『月の満ち欠け』

本屋の平積みコーナーで、「珍しく岩波文庫が…?」と装丁に目が止まると、そこには「岩波文庫的」という表記。 なんだこれはとおもいつつ、まんまと気になって購入してしまった。 率直な読後感としては、純愛物語という触れ込みだった気がするがちょっとした…

未来を形作るのは今このとき|小説『流星ワゴン』

黒い背景に小さくぽっかりと浮かぶ月、左下にはガソリンスタンドの看板。 文庫本の表紙にはたったそれだけしか描かれてないけど、むしろそのそっけなさから深夜の独特の静けさや寂しさが伝わってくるようで、妙にその時の気分にしっくりときた。 そんなわけ…

ある美容室に行ったら本好きにとっての楽園だった話

世田谷に引っ越してきてから一ヶ月半が経った。 家から駅に向かう途中、いつも目に留まっていた看板があった。 「本と髪」 大正モダンな感じの黒髪少女が手に本を持つイラストとともにそう書かれた看板は、本好きの心をくすぐるには充分すぎるものだった。 …

ハダカの心で互いに向き合う|映画『最強のふたり』

最強のふたり [DVD] 発売日: 2019/02/02 メディア: DVD のっけのシーンからグッと心を掴まれた。 夜の道を、2人の男性がドライブをしている。運転してるのは黒人の若者、助手席に座るのは白人の老齢男性。 白人男性は、硬い表情で流れる街並みを無言で眺めて…

何に従って生きるのか?|小説『ヘヴン』

同級生からいじめを受ける「僕」が主人公。 ある日、同じクラスのコジマから手紙を受け取ったことがきっかけでコジマとの交流が始まる。 そしてコジマも同じく、同級生たちからいじめを受けているのだった。 コジマは、「僕」がコンプレックスに感じていた斜…

世界に宿る命との会話|小説『ミ・ト・ン』

舞台は、ラトビア共和国をモデルにした架空の国、ルップマイゼ共和国。 ルップマイゼ共和国の人々は、クリスマスツリーに使うための木を切り倒すときには必ず木の神様にお祈りをする。 家族皆が大好きな黒パンのレシピは、杵とともに母から子へ受け継がれ、…

適当さに案外救われたりする|小説『強運の持ち主』

主人公は、ショッピングセンターの片隅で、ルイーズ吉田として占いを営む元OLの吉田幸子。 吉田幸子の言うことには信憑性がない、ということでルイーズ吉田という名前を師匠のジュリエ青柳から授かったそうだが、どっちかというと吉田幸子に占ってもらいたい…

自分ってダメだなぁ、って辛くなった時に|小説『働かないの』

40代にして仕事を辞め、今後の人生は誰にも振り回されずに生きるんだ!と、働かずに生きると決めたキョウコ。 貯金生活を始めて約3年が過ぎたキョウコの毎日は、きわめて穏やかで平凡だ。 だけどそんなキョウコの暮らしに、2つの新たな風が吹いた。 一つは…

だから、私は本を読む

私にとって、本を読むということ 転職を考え始めた時、どういう状態なら自分は幸せか?を真剣に考えた。 仕事は? 結婚は? 住む場所は? お金…?愛…? 酒と、泪と、男と、女…? … うーん、よくわからん。 ていうか、どれも積極的に自分が幸せになるために獲…

あなたはこの物語を笑うだろうか|『レプリカたちの夜』

おお?? これは?? なんだなんだ?? っていうのが1ページ目から最後まで続く作品。 帯に伊坂幸太郎のコメントで、「この小説は必ず世に出すべきだと思った」みたいなことが書いてあったので手に取ってみたらびっくり。 絶滅した動物たちのレプリカを作る…

精神の異変か、それとも死霊の憑依か|『K.Nの悲劇』

ホラーサスペンスという触れ込みだが、ホラーテイストはほぼ冒頭の部分のみ。 ストーリーの構成としてはサスペンスやミステリチックだけど、扱うテーマが重く(妊娠中絶)、主要人物の心理描写、心理分析が濃密なので、ストーリー構成の面白さというよりメッセ…

一番潔い、疲れた女性の転身物語|『れんげ荘』

私は仕事にプライベートに疲れた女性が、ゴミゴミした日常を離れて心をほぐす(個人的にはこの行動を社会的断捨離と呼びたい)みたいなストーリーが大好きだ。 それは束の間の旅だったり、もともと好きだったことを仕事にするだったり、縁もゆかりもない田舎に…

このせかいの、ほんとうのことについて|『麦ふみクーツェ』

主人公は、からだがとても大きな「ぼく」。ねこのなきまねがほんものそっくりだから、「ねこ」と呼ばれている。 彼は、おじいちゃんがティンパニストとして街の楽団を引っ張っていて幼い頃から音楽に馴染んできたことから、いつしか音楽の道を志すように。 …