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ゆる読。

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このせかいの、ほんとうのことについて|『麦ふみクーツェ』

主人公は、からだがとても大きな「ぼく」。ねこのなきまねがほんものそっくりだから、「ねこ」と呼ばれている。

 

 

彼は、おじいちゃんがティンパニストとして街の楽団を引っ張っていて幼い頃から音楽に馴染んできたことから、いつしか音楽の道を志すように。

 

 

「ぼく」はあまり同じクラスの人とはなじめず、仲良くなるのは戦争の傷の名残でおかしなリズムで歩く用務員さんや、盲目のボクサー、幼い頃の事故で成長が止まった天才チェリスト色盲の女の子など、フツウとは少しずれた人たちばかりだ。

 

 

 

人と違うことに、いつも居心地が悪そうにしていた「ぼく」は、同じく人と違う人たちとの関わりの中で、このせかいで、ほんとうにだいじなことに気づいていく。

 

 

 

この本では、音楽とか、人生とか、

とてつもなく複雑で素晴らしいもののことについて、

とてつもなくシンプルな言葉で、

すとんと心に落としてくれる。

 

とても好きな言葉がたくさんあったので、

ここにいくつか置いておく。

 

「おれはあのとき、自分のからだが音にとけだしていろんなものといっしょになったような気がした。…

あれ以来なんというのか、おれは、音楽を信じるようになったんだよ」

 

 

 

「へんてこは、わざをさ、みがかないわけにはいかないんだよ。なあ、なんでだか、ねこ、おまえわかるか」

「それがつまり、へんてこさに誇りを持っていられる、たったひとつの方法だから」

 

 

 

 

「みどり色は何十万にひとりじゃない。この世でたったひとりなんだ。ねえ、ひとりってつまり、そういうことでしょう?」

 

 

 

糸を一本一本織り合わせてできあがる美しい織物みたいに、シンプルな言葉が丁寧に積み重なって、だいじなことに気づかせてくれる作品。

 

 

 

あらすじ

音楽にとりつかれた祖父と、素数にとりつかれた父、とびぬけて大きなからだをもつぼくとの慎ましい三人暮らし。ある真夏の夜、ひとりぼっちで目覚めたぼくは、とん、たたん、とん、という不思議な音を聞く。麦ふみクーツェの、足音だった。――音楽家をめざす少年の身にふりかかる人生のでたらめな悲喜劇。悲しみのなか鳴り響く、圧倒的祝福の音楽。

 

 

麦ふみクーツェ (新潮文庫)

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★★★★★

 

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