あなたはこの物語を笑うだろうか|『レプリカたちの夜』
おお??
これは??
なんだなんだ??
っていうのが1ページ目から最後まで続く作品。
帯に伊坂幸太郎のコメントで、「この小説は必ず世に出すべきだと思った」みたいなことが書いてあったので手に取ってみたらびっくり。
絶滅した動物たちのレプリカを作る工場で働く男がある日、動くシロクマを見かけてしまい、工場長からはそのシロクマを抹殺するよう命じられてしまうんだけど、
なぜか工場長がシロクマにボコボコにされて窓から投げ飛ばされるし、
なぜかそのあとシロクマが工場長(別のポストだったかな?)として赴任してくるし、
笑っていいのか混乱すべきなのか感情がよくわからなくなる。
自分を自分たらしめるものとは何か?を問う、結構強烈に印象に残る話ではある。
シンギュラリティが現実に起こるには、まだ解けていない大きな課題があるらしいけど、とはいえ深層学習の領域は急速に実用化が進んでいるので、自分の意思や決断はどこまで自分のものであるのかが真剣に議論されることもそんなに遠い未来ではないように思う。
あと、スワンプマンの話は漫画『亜人』で一度読んだことがあり、こういったた思考実験は自分の固定概念の枠組みにぶつかる感じで好きなのだけど、そのスワンプマン状態の実験的実践という感じで面白かった。
お気に入り度
★★★☆☆
あらすじ
動物レプリカ工場に勤める往本がシロクマを目撃したのは、夜中の十二時すぎだった。絶滅したはずの本物か、産業スパイか。「シロクマを殺せ」と工場長に命じられた往本は、混沌と不条理の世界に迷い込む。卓越したユーモアと圧倒的筆力で描き出すデヴィッド・リンチ的世界観。選考会を騒然とさせた新潮ミステリー大賞受賞作。「わかりませんよ。何があってもおかしくはない世の中ですから」。