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ゆる読。

気が向いたときに小説やらの感想を残すブログ。ほっこり系、ミステリが主。

なぜ人を殺してはいけないのか|小説『悪と仮面のルール』

あらすじ

邪の家系を断ちきり、少女を守るために。少年は父の殺害を決意する。大人になった彼は、顔を変え、他人の身分を手に入れて、再び動き出す。すべては彼女の幸せだけを願って。同じ頃街ではテロ組織による連続殺人事件が発生していた。そして彼の前に過去の事件を追う刑事が現れる。本質的な悪、その連鎖とは。(Amazonより)  

悪と仮面のルール (講談社文庫)

悪と仮面のルール (講談社文庫)

 

 主人公の家系では、親が子に”邪”となるよう教育を施すという風習がある。

そこから逃げ出す唯一の手段として、主人公は少年期に親を殺し、その支配から逃れようとするが、その後の長い人生において、その殺人は彼に深く暗い影を落とし続け、その葛藤や苦しみが延々と描かれる。

この先、永遠に自分を苦しめることになるであろう人物を、自分と愛する人の幸せのために殺してしまう主人公が苦しむ姿は、「なぜ人を殺してはいけないか」という問いに十分すぎるほど答えていると思う。

 

”邪”は、平穏を壊し、憎悪を愛し、あらゆる道徳観に背を向けるものとして描かれるのだが、その邪の血筋・久喜家の人物たちがその性質と恵まれた財力・権力によりだんだんと国家テロや戦争に紐づけられていくのがいまいちしっくりこなかったのが個人的な感想。

一個人である邪の人間が、数十・数百万人を巻き込み世界を絶望に陥れるというのは確かに恐ろしいことだと思うのだが、最後の最後に急に展開がワールドワイドな話になるため、どこか上滑りに感じてしまった。邪となることを回避したにもかかわらず呪われたように苦しむ心、顔を変えても初恋の女性を守ろうとする一途な愛があざなわれた縄のように絡み合う部分へのフォーカスにとどめて欲しかった。。

 

お気に入り度

★★★☆☆