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ゆる読。

気が向いたときに小説やらの感想を残すブログ。ほっこり系、ミステリが主。

塾経営を通じた家族の悲喜交々|小説『みかづき』

あらすじ

昭和36年。放課後の用務員室で子供たちに勉強を教えていた大島吾郎は、ある少女の母・千明に見込まれ、学習塾を開くことに。この決断が、何代にもわたる大島家の波瀾万丈の人生の幕開けとなる。二人は結婚し、娘も誕生。戦後のベビーブームや高度経済成長の時流に乗り、急速に塾は成長していくが…。 

みかづき (集英社文庫)

みかづき (集英社文庫)

 

 森絵都は、中学生の頃に読んだ『カラフル』がとても印象に残っている作家。

みかづき』が本屋大賞2位ということで一時期どの本屋でも平積みされており、読んでみることにした。

 

ホンワカした表紙絵とは異なり、塾経営に携わる親子三代を描いた結構熱い大河小説。

前半は大島五郎・千明夫妻による、塾経営への理想とその実現に向けた苦闘の話、後半は夫妻の子・孫を含む大島家の絆や、子供たちが自らの足で歩きだす過程を描く家族の話、に比重が置かれている。

 

正直、中盤は「うわ~まだ半分もあるのか…」と飽きてしまったところもあるが、

最後まで読み進めると小さな伏流が合わさって大きな流れをなす河を見るような心地になり、「ここまで読んできてよかった!」と感じることができた。

 

おそらく、前半部分は、火の玉のような情熱と上昇志向を持つ千明に私自身も気後れしてしまったのだと思う。

しかし後半では、老成した千明や吾郎、塾を創業し拡大してきたものの家庭を築くことには失敗した両親を見ながら育った三姉妹、そしてその子供たちそれぞれの人生に対する思い、互いへの思いやりが不器用な形ではあるが訥々と語られる部分が多く、じんわりくる場面が多かった。

また、塾というビジネスが、どうしても理想と切り離して考えなければならない構造を持つジレンマに悩む吾郎に共感を覚えた。

 

テーマが教育ということもあり、自分が家族を持ち、さらに子供を育てることへの苦悩や希望を経験して読んだら、きっとまた違う感じ方ができるのだろう。

何かを面白がるためには、自分にそれだけの受け皿が必要だと思っているので、自分の器の大きさもまだまだだな、と思わせてくれる作品。

 

お気に入り度

★★★☆☆

 

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中学生の頃に読んだ作品。子供ながらに、生きることの眩しさを教えてもらった。

 自分に子供ができたら、ぜひ読んでもらいたいと思っている。

カラフル (文春文庫)

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