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ゆる読。

気が向いたときに小説やらの感想を残すブログ。ほっこり系、ミステリが主。

一番潔い、疲れた女性の転身物語|『れんげ荘』

私は仕事にプライベートに疲れた女性が、ゴミゴミした日常を離れて心をほぐす(個人的にはこの行動を社会的断捨離と呼びたい)みたいなストーリーが大好きだ。

 

それは束の間の旅だったり、もともと好きだったことを仕事にするだったり、縁もゆかりもない田舎に引っ越すだったり、がよくあるパターンなんだけど、この小説の主人公はそのどれでもない、

 

 

 

 

 

今後一切働かない生活!!!

 

 

 

 

 

 

である。

 

 

広告代理店での上っ面とおべっか、妬み嫉みばかりの仕事や、

実家で見栄っ張りすぎる母親に振り回される毎日に嫌気がさし、

コツコツコツコツお金をため、

45歳でついに(でも45歳まで踏ん張るのがすごい)早期退職をする。

 

 

 

 

そして家族にも内緒で、とあるさびれた家賃3万円のアパートで新生活を始めるのだ。

 

 

すがすがしいほどの思い切りの良さ!

 

 

めんどくさい上司やクライアントもいない、

行き遅れ娘のレッテルを貼るうるさい親もいない、

草木の声や鳥のさえずりを聴いて気ままに暮らす生活。

 

 

とはいえ、「何もしなくてもいい」ことに後ろめたさを感じたり、

ソワソワしてしまう主人公。

このあたり、なんだかとてもリアルだ。

突発的に思い立って仕事を辞めたわけではなく、

ずーっとひそかに心に決めて数年かけて準備してきたことだからこそ、

圧倒的な絶望感や解放感ではなく、

じんわりした焦りとか、このままでいいんだろうかというムズムズする感覚が表現されているのだと思う。

 

だけど、親切な隣人たち(だが、月3万円のアパートに住んでいるので、いろいろな背景を抱えている人たちであろうことは想像に難くない)と交流していく中で、

徐々に「ここで暮らし続けるんだ」ということに自分をなじませていく感じが心地よい。

 

この後、このれんげ荘での物語はシリーズ化されているようなので、

連作漫画のようにゆるゆる長く楽しみたい。

 

あらすじ

月十万円で、心穏やかに楽しく暮らそう! ―――キョウコは、お愛想と夜更かしの日々から解放されるため、有名広告代理店を四十五歳で早期退職し、都内のふるい安アパート「れんげ荘」に引っ越した。そこには、六十歳すぎのおしゃれなクマガイさん、職業“旅人"という外国人好きのコナツさん・・・・・・と個性豊かな人々が暮らしていた。不便さと闘いながら、鳥の声や草の匂いを知り、丁寧に入れたお茶を飲む贅沢さを知る。ささやかな幸せを求める女性を描く長編小説。

 

れんげ荘 (ハルキ文庫 む 2-3)

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お気に入り度

★★★★☆

 

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おと な  り 萌芽のころ

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