各章、集中して最後の一文まで読み込んで|小説『儚い羊たちの祝宴』
あらすじ
夢想家のお嬢様たちが集う読書サークル「バベルの会」。夏合宿の二日前、会員の丹山吹子の屋敷で惨劇が起こる。翌年も翌々年も同日に吹子の近親者が殺害され、四年目にはさらに凄惨な事件が。優雅な「バベルの会」をめぐる邪悪な五つの事件。甘美なまでの語り口が、ともすれば暗い微笑を誘い、最後に明かされる残酷なまでの真実が、脳髄を冷たく痺れさせる。米澤流暗黒ミステリの真骨頂。(Amazonより)
梅雨でジメジメしているし、陰鬱だけど気分スカッとしたいってことで、脳みそがちょっとダークな短編ミステリを欲していた。
柳広司さんのジョーカーシリーズでも 読もうかと思っていたが図書館になかったので、『インシテミル』しか読んだことがなかったが米澤穂信さんのこちらを読んでみることにした。
本書は5つの短編ミステリから成り、「バベルの会」という読書サークルで緩やかにつながっている。”いずれも「最後の一撃(フィニッシング・ストローク)」に拘った内容となっている(wikipedia)"通り、どれも終盤に鮮やかな一撃を与えてくれる。かなりおすすめ。
どれも面白かったが、個人的には3章目「山荘秘聞」4章目「玉野五十鈴の誉れ」が特にしてやられた。
というか、情けなくも一気読みしていたせいで集中が途切れ、最後の1,2ページは気が緩んで斜め読みしてしまい、「あとがき」を読んでその仕掛けの真髄に気づかされるという失態を犯してしまった。
特に3章目は、ミステリをほんのちょっとかじった程度の私は、なまじその予備知識があるばかりに、まんまと作者の手のひらでコロッコロに転がされてしまった。
全章上流階級に絡む人々による物語で、ちょいホラーだけどどこか浮世離れして耽美的な世界観と、ストロークエースの爽快さで、上質な読後感に浸れる作品。
お気に入り度
★★★★★
こちらもおすすめ
冒頭で触れた、柳広司さんの短編スパイミステリ。
陸軍内のスパイ養成機関をめぐる話。養成機関の立案者結城中佐はつねに冷静沈着、頭脳明晰。だけどたま~に見せる結城中佐の人間らしさも相まってイケメン。
ダークな短編ミステリ、で連想するのがこちら。どう考えても何か起きている。
恩田陸さん作品らしく、じょじょに現実なのか、幻想なのかわからなくなってくるので、スカッと解決してほしい派には向かないかも。