つまんない日常でもいいじゃない|エッセイ『そして生活はつづく』
あらすじ
人でも不良でも、有名俳優でもロックスターでも、誰だって家に帰れば地道な日常がある。 携帯電話の料金を払い忘れても、部屋が荒れ放題でも、人付き合いが苦手でも、誰にでも朝日は昇り、何があっても生活はつづいていく。 つきまとう劣等感&虚無感と、腹痛に立ち向かい、 そんな素晴らしくない日常を、つまらない生活を面白がろう! と決意した星野源が 洗面台をビシャビシャにしながら考えた、共感と哀愁をいざなう爆笑エッセイ。 (Amazonより)
以前流れていたビールのCMで星野源さんが話していた言葉がとても印象に残っている。
Q.「役者っていう仕事はどうですか?」
星野「自分が思ってもいないことを言えるって、なんて豊かな職業なんだって思う」
すごく淡々と話していたけど、この人はものすごい貪欲さと劣等感を抱えた人なのかもしれない、と、勝手に彼の内面を少しだけ覗いた気分になった。
このエッセイを読んで、よりそのイメージは鮮明になった。
けなしたり貶めている訳では決してなく、その貪欲さや劣等感は、むしろ今これだけ役者としてアーティストとして、輝いている大きな動力源になっているんだと思う。
昨今のイメージだと、才能溢れる爽やか塩顔男子な雰囲気を醸し出しているけど、少なくともこのエッセイを書いていた時点では、携帯電話の支払いも滞納するし、洗面所を使うたびに周りをビシャビシャにするし、すぐに「もー死んじゃえばいいじゃんおれなんかさあ」とふてくされるような、世にいうダメなやつであったみたいだ。
それでもなんだかんだこの本のいいところは、 そんなビシャ男でも、つまらない日常を何とか面白がろうとする、あがきもがきがそのまま焼き付けられているところだと思う。
「私はこんな風に考えて困難を乗り越えたことで、今こんな充実してる♪」と、自分でひらいた悟りをドヤって紹介するんじゃなく、「いや、自分でもホントダメだと思うしつまんねーと思ってるんだけどさ、ちゃんと生きたい、何でもない生活をちゃんとしていきたいんだよ」っていう、例えるなら派手にずっこけて膝をすりむいて涙と鼻水まみれだけど、何とか笑って立ち上がろうとしてるような、そんな感じ。
あとがきでは、「一生懸命生きなきゃ毎日は面白くならない」って結論にたどり着いている。
だけど私は、この本を読んで「あそっか、日常ってつまんないものだった。焦らなくていいや」とむしろホッとしたように感じた。
お気に入り度
★★★☆☆
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