気軽に 見れて、作り手の想いもしっかり心に残る|映画『超高速!参勤交代』
あらすじ
江戸期、八代将軍・徳川吉宗の時代。1万5千石の小藩・磐城国湯長谷藩に存在するという金山略奪を狙い、江戸幕府が無理難題を吹っ掛ける。「5日以内に参勤交代しなければ、藩を取り潰す! 」。
金も時間もない湯長谷藩。参勤交代を果たし、無事に藩を守ることができるのか?! 通常ならば、準備に半年、8日はかかる道のり・・・しかも貯えも尽きている。
しかしこの命令に従わなければ藩はお取り潰しに! 藩主・内藤政醇は、忍び雲隠段蔵を道先案内役として雇い、家臣の精鋭6名を引き連れ、道中人のいないところでは山道を駆け抜ける奇想天外な作戦にでる。
しかし、老中・松平信祝も刺客の忍びを雇い、参勤交代の邪魔をもくろんでいた。金に目が眩んだ幕府に立ち向かい"とんでもない"知恵を使って参勤交代を達成しようとする貧乏小藩が巻き起こす、究極の痛快歴史エンターテインメントが誕生した! (Amazonより)
なんせタイトルがいい。
参勤交代が超高速なのだ。
参勤交代といえば、江戸時代に各地の大名が各々の威信をかけて江戸までを練り歩いた一大イベントである。もちろん本物を見たことはないが、おのずとゆったりと、威厳を持った大名行列が繰り広げられていたに違いないと想起する。
それを超高速でやるというのだから、めちゃくちゃふざけているか、めちゃくちゃ一生懸命かのどちらかだ。いずれにせよ面白い。
そしてこの映画は後者で、弱小藩の藩主たちがお上のいびりにもめげず、藩を守るために、人ナシ、金ナシ、時間ナシの中でも必死で参勤交代をする。
藩の家老が絞り出した知恵で、ボロボロの武士達がカネも時間も人もない中で何とか江戸を目指す様子は、時になるほどと手を打ち、時に笑いながらも徐々に彼らのひた向きさに心打たれる。
また、そこかしこに参勤交代を行う主要登場人物たちの人柄や絆が描かれていて、彼らの珍道中をずっと見守りたくなる。
特に藩主の内藤政醇(まさあつ)は温厚で民を愛し、将軍にも物申すべき時はバシッという、現代の理想のリーダーだ。
映画冒頭、畑を耕していた村人から「いいのがでぎだんだよう~」と大根を勧められ、その場でかじった政醇が一言「ん~よい土じゃ!今年も、うまい漬物食わせてくれ!👍」 もうこの時点でいい上司過ぎて好きになる。
後半は刺客に囲まれ、戦闘シーンが多くなる。
『亜人』『キングダム』など、アクションにはめちゃくちゃ力を入れている漫画の実写化タイトルと比べると正直苦しいけど、佐々木蔵之介さんの抜刀術はどハマりしていた。こりゃかっこいい。
『キングスマン』のコリン・ファースもだけど、スピード感ある立ち回りや殺陣の応酬ではなく、体幹をしっかり保ちながら美しい姿勢でバッサバッサ敵を切り倒していくのがオジサマによるアクションとして最もカッコイイと思う。
そんなこんなのドタバタを乗り越えて、何とか江戸へたどり着いた藩主に対して将軍が伝えた言葉「まつりごとを疎かにしていわきの土を殺してはならぬ。この先、とこしえにな」はとても力がこもっていて印象的だった。
後で調べると、もともとこの映画は震災を機に作られたそうだ。
↓脚本家の方のブログ
https://ameblo.jp/dobassie/entry-11685287035.html
冒頭の大根の場面といい、短いセリフながらもところどころに被災地への愛と畏敬の念を強く感じた。
いい映画。
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★★★★☆
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こちらも貧乏藩が知恵と工夫で難を乗り切る話。