世界観が病みつきになる妖しくも美しい学園譚|小説『麦の海に沈む果実』
こんなあなたに
- 多感な少年少女と閉鎖空間が生み出す学園ものの雰囲気が好き
- ミステリアスな転校生に憧れた
- ”昔の記憶がすっぽり抜け落ちていて、今の自分と昔の自分は全く違う人格だったのでは”と妄想したことがある
- たたみ込むような謎に溺れたい
【感想キーワード】
- ゾクゾク
- 幻想的
- 物悲しい
あらすじ
主人公の少女・理瀬は、二月の終わり、灰色の湿原に囲まれた丘に建つ全寮制の学園にやってきました。
その学園にあつまる子供たちは、暗黙のもと親が社会的権力、金銭的豊かさを誇る「ゆりかご組」、有名人の私生児などで世間から存在を隠すように預けられた「墓場組」、特別な才能を持った「養成所組」に区分されています。つまり、どこか「特別」な子供たちなのです。
「三月の国」と呼ばれるその学園では、三月以外の転入生は破滅をもたらすと伝えられていました。
理瀬自身は、漆黒の長髪に静かな瞳を持つ控えめな性格で、
最初は好奇の目にさらされていましたが、
徐々に周囲とも関係性を築いていきます。
しかしほどなくして、学園では不可解な事件が次々と巻き起こるのでした。
感想
この作品の魅力は、なんといってもこの学園を取り巻く独特の世界観です。
美しく才能豊かな生徒たちが青春時代を過ごすこの学園は、
湿原によって外の世界からは隔離され、
学園の中だけでコミュニティを築いていきます。
灰色の世界に囲まれた丘の上の学園で、
少年少女たちは何を感じ、何を考え、どんな行動をとるのでしょう。
多くの伏線が張り巡らされたミステリでありながら、
どこか異世界に迷い込んだようなファンタジックな雰囲気に浸ることができます。
恩田陸の魅力がふんだんに詰まった作品です。
お気に入り度
★★★★★