不思議は雨と地続きに|『家守綺譚』
こんなあなたに
- 梅雨の時期のおこもり本を探している
- ふと目に入ったつくしや、ある日突然に香るキンモクセイなど、五感で四季の移ろいを感じ取る
- 伝記や伝承など、土地に脈々と受け継がれた物語や文化、歴史は、今もこれからも大切にしていきたいと思う
【感想キーワード】
- 穏やか
- 懐かしい
- 不思議
あらすじ
庭・池・電燈付二階屋。汽車駅・銭湯近接。四季折々、草・花・鳥・獣・仔竜・小鬼・河童・人魚・竹精・桜鬼・聖母・亡友等々々出没数多……本書は、百年まえ、天地自然の「気」たちと、文明の進歩とやらに今ひとつ棹さしかねてる新米精神労働者の「私」=綿貫征四郎と、庭つき池つき電燈つき二階屋との、のびやかな交歓の記録である。(Amazonより)
感想
大学時代の友人の実家の家守を任されている駆け出し文士の目を通じ、
日々巻き起こる、家の内外での”ささいな”出来事がつづられます。
春の嵐が雨戸をたたく、木が家守に懸想をする、
カラスウリの蔓が隆盛を誇る、犬が河童とサギの仲裁をする…。
そんな”日常”が淡々と、しかしどこか芯をもって描かれていきます。
それが不思議かどうか、ということは多分大した問題ではなく、1日1日のささいな違いにどれだけ気付けているだろうか、とふと立ち止まって考えたくなります。
この本を読んだ後に見える世界は、いつもよりもっともっと多くの命が映ることでしょう。
雨の日に、縁側で、庭の植物をたたく雨音を聞きながら読みたい本です。
お気に入り度
★★★★☆